「大人しくドラム缶の中で光合成でもしてやがれ!クソマリモ!!」
「あぁ!?てめぇこそ、どっかのバーで的にでもなって来い!グルグルダーツ!!」
「っだとぉ!?やんのか、こるぁ!!」
「おお、上等だ!!」

 額を突き付け合った二人の怒声がサニー号に響き渡る。
 睨み合いは罵り合いとなり、ついには破壊音まで響いてきたが、それぞれにのんびりと過ごしていたクルー達は特に気にする様子も無く自分のペースを保っていた。
 ただ一人、最年長者であるこの船の大工が、いそいそと修理の為の材料を揃え始め、律儀な狙撃手が黙ってそれを手伝う。

 周囲に響く破壊音から予測される必要な材料を揃え終わったフランキーは、大きく手を振って声を張り上げた。
「おーい!姉ちゃん!そろそろ良いぞー!」
 その合図を受け、読みかけの本を脇に置いたナミが立ち上がり、天候棒を組み立てながら騒音の発生地点へと足を向ける。

「いい加減にしろーーーー!このお馬鹿コンビ!!」

 響く騒音をも上回る怒声。突如現れた暗雲に雷。そして訪れる静寂。
 これらの展開全てが、此処最近のサニー号での日常であった。





「まったくもう!毎日毎日、良く飽きないわねー」
 チョッパーが差し出したシップを受け取り呆れた様に呟いたナミは、赤く腫れ上がったサンジの頬にぺたりと貼り付ける。
 その隣ではロビンがくすくすと笑いながら、口の端を切ったゾロの手当てをしていた。
 サンジは困ったように眉を下げ、ゾロは少し拗ねた様な表情でナミの小言を黙って聞いている。
「で?一応聞いてあげるけど。今日の原因は何?」
 その言葉にびくりと肩を揺らした二人が、そろそろと視線を外していく様子を見たナミは、腰に手を当て大仰に溜息を付いて見せた。
「あっそう。つまり『また』特に大きな原因は無いわけね?」
 強調された単語に、ますます気まずげに俯いた二人を見て、ロビンが忍び笑いを漏らす。そうして手早く道具を仕舞うと、ナミとチョッパーを促して医務室の扉へと向かった。
「早く仲直りなさいな、二人とも」
 一言も発しない二人を残し、表へと出た三人は顔を見合わせて口元を緩めた。
「二人とも、仲直りするかな?」
「無理でしょ。もう、あいつらはあんなモンよ」
「ふふ。でも可愛いわ」
三者三様の感想を述べた後、彼女らはそれぞれの日常へと戻っていった。




 一方、残されたサンジとゾロはその場を動かずに、ぼそぼそと言い合っていた。
「・・・・・・なんで原因覚えてねぇんだよ。クソ剣士」
「てめぇだって同じだろ。クソコック」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
 お互い探る様な視線を交わし、口を閉ざす。

「俺は悪くないと思うぞ」
「俺だって悪くねぇ」
 今まで何度も交わされてきた会話。交わされてきた視線。



 『絶対、自分から謝るもんか』



 サンジは腫れ上がった頬を撫で、舌打ちする。
 ゾロは切れた口の端をなぞって、眉を顰める。

 そして、どちらも折れる事無く、うやむやになっていくその場の空気。

「取りあえず、オヤツ作るか。お前、何が良い?」
「あんま、甘くないやつ」
「ん」 
 立ち上がり、共にキッチンへと向かう。
 この広い船内。別々の場所に居れば喧嘩もせずに済むだろうに、思い付きもしないらしい男が二人。


 そして繰り返される、彼らの日常。


お題2:意地っ張り でした。
たらたらとした日常です。書いている私はすっごく楽しいです。えへ。
二人の間が進むにはまだ時間がかかりそうです(笑)

うーん。私は楽しいけど、読んでくださってる方にはつまらないかなぁ・・・(汗)
まぁでも、其の内ちゃんとサンゾロになると思うので、気長に付き合ってくださると嬉しいですv
では、最後まで読んで下さって有難うございました!
(’08.4.19)

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