満月が来るたびに、君はたった一人で月を見上げてお酒を飲んでた。
本当はね、最初の内はそれを見るのが。
ほんの少し、辛かったんだよ。
ありがとう
初めて君と会ったのは子供の頃。
全然弱いくせに負けん気ばかり強くて。手に負えない弟って感じかな。
でも段々、大きく、強くなっていく君に焦りと、妬みと。
そんな醜い感情が湧き上がってきて。
これ以上、大きくならないでよ。
これ以上、強くならないでよ。
そんな思いで一杯だった。
君との最後の勝負。絶対に負けられなかった。
まだ私の方が強いんだって、思い知らせてやりたかった。
その時は勝つ事が出来たのに、勝ちたいと思っていたのに、全然嬉しくなかったんだよ。
何でだろうね?
君が確実に強くなっていたからかもしれない。
泣きたいのは私の方なのに、君が先に泣いたからかもしれない。
ねぇ。
勝ったのは全然嬉しくなかったのに、君との約束はすごく嬉しかったんだよ。
ごめんね。
ごめんね。
約束を破って、ごめんね。
だけど、君が私の分も強くなるって、私の所まで名前を届けてくれるって約束は、とても嬉しかったよ。
私も一緒に走っていけるんだと、嬉しかったんだ。
でも。
そのときから君は。
一人になってしまった。
私との約束のために、誰も信じずに。誰にも頼らずに。
たった一人で。
満月が来るたびに、君は月を見上げて一人でお酒を飲んでいた。
たまに月に向かって杯を持ち上げて。
私を思い出してくれていたのかな。それはとても嬉しいんだけど、本当はね。
そんな君を見るのが、ほんの少し、辛かったんだ。
私との約束のせいで、一人にしてしまった。
それが、辛かったんだよ。
ねぇ。麦藁帽子のお兄さん。
彼の手を引いてくれて、ありがとう。
綺麗なオレンジ色の髪のお姉さん。
彼に大切な人達のために、何があっても生きようとする強さを教えてくれて、ありがとう。
ちょっと変わった鼻のお兄さん。
彼に力だけじゃない、心の強さの大切さを教えてくれて、ありがとう。
可愛いトナカイさん。
彼に大事な人の遺志を継ぐという意味を教えてくれて、ありがとう。
そして。
素敵なコックのお兄さん。
彼に誰かを愛しく思う事を教えてくれて、ありがとう。
彼を愛しく思ってくれて、ありがとう。
一番心配だったの。
このまま誰も信じず。誰も頼らず。
子供の頃のまま、心が止まってしまわないか。
でも今、君の目はそのお兄さんが大切だって、言ってる。
お兄さんも、君を大切に思ってくれている。
ありがとう。
ありがとう。
ありがとう。
私が止めてしまった彼の時間を動かしてくれて、ありがとう。
今、満月の日にお酒を飲んでいる君は、一人じゃないんだね。
一緒に飲めないのが少し寂しいけど。
ほら、もうすぐ皆がやってくるよ。
今日もにぎやかな宴会になりそうだね。
でもさ。
子供のままの私には少し刺激が強いから、キスするなら月が雲に隠れた時にしてくれない?
おわり
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くいなちゃんが好きです。もう、自分でも予想外なほどです。
というか、強くて可愛い女の子が好きです。
だから、ワンピの女の子見てると幸せです。
くいなちゃんは永遠にゾロのお姉さんだといい。
それでは最後まで読んでくださってありがとうございました!
(2008.3.4)
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